家族カテゴリの記事一覧

娘に会いに行く

わしはバカじゃ。何も娘の悩みをわかっておらんかった。
二日たち、療養所に見舞に行く。部屋には娘はおらんかった。午後は作業があるからとのこと。

邪魔にならんように、中央広場まで歩く。静かなところじゃ。空気は澄み渡り、繁華街の喧騒はここにはない。草のムンとした匂いが足元の芝生から漂う。
娘は、健気にうごいとった。茶髪のあいつは遠目からすぐわかる。班長みたいね長身の女性と楽しそうに話しておる。草を刈っておるようじゃった。

わしはそのまま帰って来た。それ以上そこにいる意味もなかったし、草の匂いを嗅ぎながらわし自身が娘の悩みであったことを忘れておった。
娘の笑顔を見れて十分じゃ。妻は面接にでかけておる。
帰宅したら、元気じゃった、とだけ伝えよう今度は妻と一緒に弁当こさえて娘に会いに行こう。

それまでわしは、がんばる。働かなければなるまいて。まだまだ隠居は許されないようじゃ。

| 大阪 ☔ | TrackBack(0) | 家族

わしはバカ

失業


長いこと遠回りばかり繰り返してきたようじゃ。

好きなものをすきだといえなくなった。
しかし今にはじまったことではない。

理由もなくイライラし、怒りっぽくなった。
しかし今にはじまったことではない。

金儲けのために自分の大事なものから目を反らしていた。
しかし今にはじまったことではない。

幼少の覚めた直感はいつしか論理や思想などの大義名分のもとで茫漠と化した。しかし今にはじまったことでは・・・。

くだらんグジグジした悩みを掘り返すミイラ取りのような作業にわしは、つい最近まで夢中になっておったようじゃ。

妻は妻の苦しみに悩んでおった。
娘は娘の痛みを抱えておった。

わしら家族はひとりひとりが傷ついている。
わしの中で勝手気ままに振る舞ってるように見えた妻も娘も、切実に誰かの――(その人はわしでなければならない、他の何者でもあってはならない、その可能性があったとしても)ーーわしはあまりにも自分の悩み無き悩みに酔っておりふたりのことを放っておいたままじゃった。

わしが失業生活を過ごしておっても、ふたりにはそれ以上に深刻な解決すべき問題がのしかかっておったのようじゃ。

わしは、ふたりがいなくなることがかんがえられん。わしの悩みはあってないようなものじゃ。
子供じみた拙い夢じゃ。
わしの現実は妻を娘の失ったものを取り返してくることじゃ。

・・・ふたりの心を、この手にとりかえすまではもうしばらく、
しばらくは、失業じゃの。



| 大阪 ☀ | TrackBack(1) | 家族

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。